《「糊(のり)づけ」の意》現代絵画の一技法。画面に印刷物、写真の切り抜き、針金など、さまざまなものをはりつけ、一部に加筆などをして構成するもの。ダダイスムやシュールレアリスムで多用され、今日では広告などにも用いられる。アーティスト自身が、リスペクトするアーティストに対する愛情を包み隠さずさらけ出すという事は、表現者としては諸刃の刃だと思います。
大辞泉 より
特に楽曲にその影響が色濃く出すぎると、楽曲自体のオリジナリティが無くなってしまい、さもすればパクリといわれてしまいますので、その辺のサジ加減は非常に難しいのだと思います。
そうはいっても結局は、アーティストがパクリだなんだと話題になる場合というのは、得てしてその楽曲や詩に対する影響を隠し、あたかも自分の作品だとする場合であって、きちんとした敬意を表している場合は問題にならない場合が多いように思います。
最近、盗作だと訴えられたAvril Lavigneの「Girlfriend」にしても、Avril Lavigne本人が知らないのはともかく、周りの関係者全員がRubinoosの「I Wanna Be Your Boyfriend」を知らないはずがないですので、多分このくらいは大丈夫だろうという線引きの元で実行されているはずです。ですので結局はリスペクトの元で楽曲が作られているかどうかなのだとも思います。
また、カバー曲にしてもオリジナルの楽曲をそのままカバーしたところでオリジナルを超えるのは至難の業ですし、楽曲に新たな解釈を加えるのか、何らかのアレンジや歌唱的なスキルを加える事で初めて、良質なカバー曲が誕生するのだと思います。
日本でも様々なカバー曲があるのですが、そういった意味で良質なカバー曲というのは少ないといわざるを得ません。
いつものように前フリが長くなりましたが、今回はそんな日本のアーティストのカバー曲のお話。
最新アルバム『遥かなるまわり道の向こうで』でも変わらず良質でリスペクトに溢れた音楽を届けてくれているKANのご紹介です。
KANというアーティストを知っている人は多いですが、その多くが「愛は勝つ」の人という認識だと思います。
個人的に、KANは日本の誇る最高のシンガーソングライターのひとりだと思っていますし、先日ご紹介したPaul McCartneyの正当な系譜にいるアーティストだと思っています。幸か不幸かKANには「愛は勝つ」という大ヒット曲がありますが、「愛は勝つ」がBilly Joelの「Uptown Girl」を意識して作られた事や、KANの発表してきた楽曲の多くが、リスペクトするアーティストに対する愛情を包み隠さずさらけ出したものである事は驚くほど知られてません。
KANの音楽性を一言で表現するのは難しいのですが、KAN本人が自身の音楽を評して【Beatlesのメンバーの中にBilly Joelがいる音楽】だと語っていたのを読んだ記憶があり、この言葉は非常にKANの音楽の本質を表現しているように思います。
遥かなるまわり道の向こうで
KAN

さてここからが本題なのですが、今回は『遥かなるまわり道の向こうで』からのシングルカット「世界でいちばん好きな人」(KANの真骨頂のバラード)のカップリングとして収録されたカバー曲「チェリー」を解析したいと思います。
「チェリー」はご存知の通り、スピッツの大ヒット曲ですが、今回KANはこの曲に前代未聞のコラージュを仕掛けてきています。
そのコラージュとは「チェリー」が収録されている『インディゴ地平線』の収録曲のフレーズを「チェリー」の中に散りばめるといった試みで、スピッツとKANを聴き続けてきた自分のようなリスナーにとっては記念碑的な作品だといえます。
残念な事に正式に解答等は発表されていないようですので、自分なりに聴き比べて導き出した解答をご紹介したいと思います。
以下、自分なりの解答・・・
1分24秒〜虹を超えて
1分39秒〜ハヤテ
2分30秒〜夕日が笑う、君も笑う
2分38秒〜ゴジラ
2分40秒〜初恋クレイジー(ピアノ)
2分57秒〜花泥棒
3分15秒〜渚
4分01秒〜ハヤテ
4分18秒〜初恋クレイジー
4分24秒〜インディゴ地平線
4分28秒〜まゆみ
4分31秒〜バニーガール
4分41秒〜ナナへの気持ち
4分48秒〜マフラーマン?(ストリングス)
とまあこんな感じで『インディゴ地平線』が随所に挿入されています。
一曲の中にこれだけのフレーズを散りばめるのは至難の業だったと思いますし、大胆不敵ともいえるストリングスのアレンジはKANの真骨頂だともいえるでしょう。また、原曲のメロディや雰囲気は弄ってませんので(キーは変えてありますが)、何も知らずに聞くと単なるカバーに聞こえてしまうという、厄介でもあり実に見事な一曲でもあります。
「初恋クレイジー」、「花泥棒」、「インディゴ地平線」あたりは何度か聞けばすぐ分かるのですが、その他の曲を捜すのは結構難しいです。
「バニーガール」と「ナナへの気持ち」は【そうきたかっ!】というような忍ばせ方ですし、「ゴジラ」や「まゆみ」などの他のコラージュも入っています(中盤はI Am The Walrus風にも聴こえる)。
中には自信がない部分もあって、「マフラーマン」のフレーズは正直微妙だと思うのですが、他に聴きあたらなかったので入れています・・・
加えて、3分40秒〜のフレーズが何かのフレーズだと思うのですが、分かりませんでしたので、当方非常に気になっています・・・分かった方はお便り下さい。
調べてみたところ、『インディゴ地平線』の中から10曲コラージュしてあるとの記載があったので多分「ほうき星」はコラージュされていないと思います(されていたらゴメンナサイ)。というか正解が分かる方、こちらもお便りお願いします。
インディゴ地平線
スピッツ 草野正宗 笹路正徳

『インディゴ地平線』収録曲
1. 花泥棒
2. 初恋クレイジー
3. インディゴ地平線
4. 渚
5. ハヤテ
6. ナナへの気持ち
7. 虹を超えて
8. バニーガール
9. ほうき星
10. マフラーマン
11. 夕陽が笑う、君も笑う
12. チェリー
KANがカバーした「チェリー」には、一聴しただけではわからない音楽の楽しみが詰め込まれています。
スピッツとKANの公約数が一体何なのか?
その答えはKANがカバーした「チェリー」に中にあるように思います。
スピッツが好きでKANを聴いた事がない人に、この「チェリー」を聴いてもらいたい。
Paul McCartneyが好きでKANを聴いた事がない人にKANを聴いてもらいたい。
逆にKANが好きでスピッツやBeatlesやBilly JoelやStevie Wonderを聴いた事が無いのであれば聴いてもらいたい。
そうやって音楽が回っていったらいいのになと思います。
耳を澄ませば音楽家の誇りと愛情と尊敬が聴こえてくる。
多くの表現者がそうであればいいのにと思います。
世界でいちばん好きな人
KAN 小林信吾 草野正宗

アップフロントワークス(ゼティマ) 2006-11-29
売り上げランキング : 28270
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools
KAN『チェリー』
補足
ちなみにこの「世界でいちばん好きな人」の発売は昨年の11月ですが、自分が購入したのは今年になってから。
その後、4月にKAN氏のライブに行って、その後にすぐ掲載するつもりでこのエントリーに着手したのですが、コラージュの解析に手間取っているうちに延び延びに。
このままお蔵入りするところだったのですが、Paul McCartneyの新作を聞いたのをきっかけに再開。今回ようやくアップすることが出来ました。
という事で、大幅に時期がずれたエントリーになっていますがどうかご理解を。
スポンサードリンク




