12月11日はSam Cookeの命日で、12月10日はOtis Reddingの命日なので非常に運命めいたものを感じます。ちなみにJames Brownの命日は12月25日ですし、12月は何故だかそういう月なのかも知れません。
ソウルやファンクやブルースに関しては知識が不足している為、Ike Turnerに関して多くは語れないのですが、JBに引き続き現世へ繋ぐ糸が途切れたような気がしてとても寂しく思うのであります。
Dynamite
Ike & Tina Turner

さて、今回はそんな12月12日に発売されるべく発売されたウルフルズの最高傑作に関して少々。
今年のウルフルズのシングルのリリースラッシュから分かる通り、ウルフルズの今作『KEEP ON,MOVE ON』にかける意気込みは半端じゃなく、レコード会社移籍のタイミングも重なり、タイアップの数もウルフルズ史上最多(収録曲中タイアップが5曲)という作品となりました。
アルバム前にシングルを三枚発売した事で、アルバム収録曲13曲中6曲が既発で(iTunesにて配信中の「あんまり小唄」を入れれば7曲)、正直、どうなんだろう?という不安はあったのですが、それは無用の心配だったようです。
名曲「たしかなこと」はもちろんの事、シングルとそのカップリングの曲自体の出来は良かったので、後はその他の楽曲の出来と配置が重要となってくるのですが、シングル曲等に負けず劣らずクオリティが高い楽曲が並んでいる為(「カッコつけて」〜「開けてけ!心のドア」までの流れがアルバム中盤をガッチリと固められている)、アルバムにバラつきが無く安心して聴ける一枚となっています。
ウルフルズに関して、以前マーティ・フリードマンが面白いコラムを書いていて、その中でこの様に表現されています。
ウルフルズはロックバンドなのに洋楽の影響が全く見つからないんだよね。
あと、ウルフルズって歌詞はコミカルで遊び心が満載だけど、サウンド自体はすごくちゃんとしてるじゃん。メロディーは歌謡曲の王道で分かりやすいし。コミカルさとまじめさが混じっているのは洋楽ではありえないです。
自分はウルフルズをロックバンドであるとともに、そのバンド名の通り最高のソウルバンドだと思っていて、だからこそ基本的にメタル畑のマーティ・フリードマンの目には摩訶不思議なバンドに映るのではないかと思います。一見、洋楽の影響が全く見つからない様に見えるのはウルフルズにロック以上のソウルやブルース、そしてファンクの素養があるからであって、この辺は60年代のバンド(例えばRolling Stones)とも共通するのかもしれないのですが、さらにウルフルズには日本人独自の演歌的で歌謡曲的な泣きのメロディ部分が加わっています。
『KEEP ON,MOVE ON』はそういった自分達のルーツにウルフルズが真剣に向き合った作品だと思います。現に「あんまり小唄」はクレジットにもある通りElmore Jamesに捧げられた曲だし(ほぼ「Dust My Broom」の替え歌に聞こえますが)、ラストを飾る「四人」(ジャケのジョンBが泣ける)はBobby Hebbの『SUNNY』+Sly & The Family Stoneな曲だし、アルバムのタイトルからいっても、ウルフルズのルーツが垣間見えてきます。
大阪から出てきたウルフルズが時に方言を交えて、くだらない事や情けない事や泣ける事を歌い上げるのは、正しくそれがソウルミュージックでありブルースなのだからであり、それはおちゃらけているというよりも、ウルフルズの偽らざる本質的な部分なのだと思います。
そしてその大阪という地域性や方言を生かして続けているスタイルはウルフルズのソウルの部分だし、地域色を前面に出して活動し続けている日本では唯一無比の存在であるウルフルズこそがもっと評価されるべきバンドだと思います。
KEEP ON,MOVE ON
ウルフルズ 伊藤銀次 トータス松本

例の如くamazonではDVD付が割引になっています。
前作『YOU』では「サムライソウル」という大名曲があったものの、個々の楽曲の出来と、これまた大名曲の「YOU」のiTunesバージョンが収録されなかった事が不満だったのですが(それでも十分名作なんですが)、そういった不満を見事に解消してくれる密度の濃い49分間になりました。
サンコン.JrのコラムによるとMuddy Watersは生前「Keep Goin' On」とよく言っていたそうだ。
実にブルース。
ウルフルズの『KEEP ON,MOVE ON』もそのタイトル通り、ソウルであり実にブルース。
同時に日本でしか生まれ得ないロックンロールバンド、ウルフルズの最高傑作。
Only this is a rock'n'roll band in Japan.
それがウルフルズだ。