レコード会社から契約を切られる場合は
1、広告費を掛けた割に一枚目のセールスが伸びなかった
2、最初は良かったが二枚目三枚目とセールスが伸びない
3、レコード会社の意向に沿ったアルバム内容もしくは製作ペースでない
大体この三点が大きな理由になります(まあセールス的な都合が多いです)。
もちろん、アーティスト側とレコード会社の意向が合わずに離脱や移籍するアーティストも数多くいます。
日本の音楽業界(特にロック系)では有名音楽雑誌でどれだけ取り上げられるかがセールスを握るといっても過言ではなく、その扱いやセールスの内容によっては日本のみで流通するアルバムを発売出来たりしますし、アルバムを大幅に先行発売する世界的アーティストも少なくありません。
日本ではドラマや映画の主題歌に洋楽が使われる事は多くありませんので、洋楽のセールスにおいては未だに紙媒体の影響が強いと思います。
しかし、最近ではインターネットの普及と共にネット上から人気が出るアーティスト(My spaceやブログ、Youtubeなど)が徐々に増えてきました。
これからはインターネットを使った販促を無視する事はできないと思いますし、徐々に紙媒体に依存しない独自の広がりが音楽業界に見られるようになると思います。
私自身、音楽業界は今後ネット上の口コミのマーケティングを重要視せざるをえないと思ってますし、その為に音楽データベースのような情報が集まる音楽専門のポータルサイトのようなものが必要になってくると思っています。
さて、今回ご紹介するイギリスのバンドThe Bluetonesも一枚目はイギリスでも日本の音楽雑誌でも大きく取り上げられ、UKチャートの1位を獲得したほどのバンドです。
しかし、枚数を重ねるにつれセールスも伸び悩み(といっても三枚目のアルバムもチャートベスト10に入ったようです)、そしていつの間にか日本の音楽雑誌からもほとんど無視される存在になってしまいました。
そんなThe Bluetonesが発売した五枚目のアルバム「The Bluetones」は原点に回帰しながらもしっかりと足場を固めた素晴らしい作品となっています。
日本でもそれなり人気があったThe Bluetonesですが、ロッキングオンという日本で有数の音楽雑誌の中で、当時の編集長である山崎洋一郎氏に、このように取り上げられた事があります。
僕が一番ショックを受けたのが、ロッキング・オンでは見た事のないヘヴィー・ロックやヒップホップのグループのそれなりに力が入ったクリップが流れているときにふと、ロッキング・オンではおなじみのブルートーンズのクリップがはさまった時だ。正直に言って、現在形のバンドとしてのアクチュアリティーも、そんなものはくそ食らえと言いきれる思い切った個性も、画面からは出ていなかった。オアシスやトラヴィス、ブラーやリチャード・アシュクロフトのクリップにはそんな事は全く感じなかった。いや、むしろ堂々としたUKらしさをふりまいていて頼もしかった。
〜中略〜
その時かかったブルートーンズの圧倒的な弱さ、中途半端さは自分の中でフォローできないほど明らかだった。僕はブルートーンズをコケにしたいわけではない。UKよりのリスナーの自分にとっては、彼らのUKバンドらしいたたずまいとしっくりなじむメロディには愛着と親近感がある。だが、その愛着と親近感にあまりにも寄りかかりすぎていたのではないか・・・
〜後略〜
ロッキングオン2000年 7月号 激刊!山崎
より引用
当時、この文章を読んだ時に何ともいえない違和感と嫌悪感を覚えた事を記憶しています。
全く対極であった当時のアメリカの音楽シーンを比較の対象に挙げているのですが、あまりにも比べる観点が突飛ですし、何を持って強さと中途半端さを推し量っているのかが不明瞭で、その辺に違和感を感じていました。
この文章では、あくまでも一個人の感想の域を出ていないですし、編集長の立場としてこの文章を誌面でわざわざ取り上げる必要性が希薄ではないかと思うと、何だかやりきれない気持ちになったのです。
もちろん、この後ロッキングオン誌でThe Bluetonesが大きく取り上げられる事がなかった事はありませんでした。
The Bluetonesの魅力はUKロック独自の弱さや儚さを持ちつつも、懐古主義にならない程度のビンテージ感をバランス良く鳴らしているところであり、山崎氏の述べている弱さや中途半端さと表裏一体な部分もあるのではないでしょうか?
さて、話を戻します。
The Bluetonesの新作「The Bluetones」は傑作です。
前作「Luxembourg」ではRamonesからの影響も口にしていたマーク・モリス(vo)ですが(実際にBeat On The Bratもカバーしてます)、前作で手にしたボトムの強さを消化しつつも、UKギターロックとしての集大成を今作で見せ付けました。
一曲目の「Surrendered」のように、ほぼ完璧なブルートーンズ節を聞かせながらも、ポップスとしての一つの方向性を打ち出した曲もあれば、前作の流れを汲んだ「Head On A Spike」もあり、一つのアイデアのみをこれでもかと推し進める従来のThe Bluetonesの手法を極めた先行シングルの「My Neighbor's House」もあり、それぞれの曲が違和感無くアルバムに溶け込んでます。
初期のThe Bluetonesの弱さから目を背けず、裏切らず、全てを乗り越えて進んでいこうとする強さが今作にはありますし、ギターロックバンドとしての意欲作であった前作「Luxembourg」と対を成す内容になっているので前作と一緒に聞いて見て頂きたいと思います。
Luxembourg
The Bluetones

あれから六年経ちました
これでもThe Bluetonesは
圧倒的に弱くて中途半端な存在でしょうか?
The Bluetones
The Bluetones

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