元来ベスト盤というのは、長年にわたりアーティスト活動を続けてきた証でもあり、多くの作品を生み出し続けたアーティストを、後追いで追いかけるリスナー為の入門盤であったはずです。
昨今ではアーティストの意向と関係なく、ベスト盤が発売される事が当たり前なってきているのは周知の事実だと思いますが、これはアーティストの契約上の問題も複雑に関係していて、アーティストがレコード会社を移籍する場合は殆どの場合でベスト盤が発売されます。
簡単にいえば
「あんたら契約上はあと○枚アルバムを出す契約なんだから、移籍するならベスト盤を出さないと移籍出来ませんよ」
という事なのです。
日本の場合はセールス的な問題で、キャリアの浅いアーティストにも早い段階でベスト盤を出させる傾向にあるのですが、海外のアーティストの場合、このような裏事情がある場合が多いのです。
先日発売された
oasisのベスト盤
「Stop the Clocks」もこのような事情がある作品で、次回作は自分達のレーベルであるBig Brotherでの展開を予定している
oasisがsony側から促されて製作したベスト盤です。
oasisの中心メンバーであるノエルいわく「自分が監修しないとsonyに勝手にシングルヒッツを出される」との事で、渋々ノエル自身が選曲したベストアルバムになっているのですが、この二枚組の選曲は興味深い物になっています。
oasisのライブを体験した事がある方ならお分かりかと思うのですが、ライブのセットリストに非常に近い印象を受けます。
「Rock 'N' Roll Star」で始まり
「Don't Look Back In Anger」で終る選曲はライブそのものだし(日本盤はボーナストラックが入ってますが)あえてシングル曲の収録を減らし、B面の曲を散らしている事でベスト盤にありがちな重たさも無く、すっきり聴けるアルバムとして成立しています。
このベストアルバムに関して、日本でも馴染みの深い名曲
「Whatever」が収録されていない事に、ファンの間で賛否両論が起こっているのですが、私自身はこれは大正解だと思っています。
「Whatever」自体がライブで歌われる事の少ない曲だという事もあるのですが、個人的に
oasisがここまでメジャーなバンドになったのはファーストアルバム
「Definitely Maybe」とセカンドアルバム
「Morning Glory」を繋ぐ役目の
「Whatever」の存在が大きく、セカンドアルバムからシングルになった
「Roll With It」「Wonderwall」「Don't Look Back In Anger」の三枚がカップリング曲を含めて神がかり的に出来が良かった事こそがoasisの全てだと思っています。
未だにどのアルバムにも未収録の
「Whatever」こそが
oasisの象徴的な一曲であると思っていますし、逆に
「Whatever」が
「Stop the Clocks」に収録されていないというところに、ノエルのこだわりや気骨を感じます。
蛇足ですが、ノエルも認めている通り
「Whatever」は
Neil Innesの
「How Sweet To Be An Idiot」という曲から2小節ほど拝借してきているので、この辺りの権利的問題があって収録されなかった理由なのでは?という見方もあるようです。
個人的には
Rutlesの中心人物である
Neil Innesと
oasisが繋がって、この二つのバンドが
Beatlesを中心に繋がっている事の方が素晴らしく微笑ましいので、邪推しすぎなのではないかと。
ちなみに、
Rutlesの「Archaeology」というアルバムに収録の「Shangri-La」が
「Whatever」のアンサーソングだといわれていて、非常に懐の深い対応だなと思うわけです。
ArchaeologyThe Rutles

話は逸れましたが、
oasisのベスト盤
「Stop the Clocks」は色々な意味でベスト盤の存在を考えさせれました。
ファンなら収録曲は全て持っているでしょうし必要の無いアルバムといえますが、ノエルの選曲の意図を考えながら、DVDやブックレット、アートワーク等を楽しむのであれば購入する意義は十分にあります。
oasisに触れた事のない人にとって見れば入門盤としての役目は果たしますし、このベスト盤を気に入ればオリジナルアルバムに手が伸びる事になるでしょう。
それこそが、紛れも無くベスト盤の役目だと思います。
Stop the ClocksOasis

おまけ
画質は悪いですが最後の合唱をぜひ